和紙 富山県

内山紙の作り方と魅力をわかりやすく解説【伝統を受け継ぐ技術】

(※工芸品画像出典元:BECOS)

和紙と聞いて思い浮かべるのは、どこか懐かしく、温かみのある手触り。中でも「内山紙(うちやまがみ)」は、長野県飯山市に伝わる伝統的な和紙で、国の重要無形文化財にも指定されています。手仕事によって丁寧に作られる内山紙は、ただの紙ではなく、日本の歴史や文化、自然とのつながりを感じさせてくれる特別な存在です。

本記事では、「内山紙 作り方」というキーワードを中心に、内山紙の基礎知識からその魅力、そして作り方の工程までをわかりやすく紹介します。さらに、実際に体験できるスポットやワークショップ情報も取り上げているので、「自分でも作ってみたい!」という方も必見です。伝統と技術が詰まった内山紙の世界を、ぜひ一緒にのぞいてみましょう。

内山紙とは?基本知識とその魅力

内山紙の歴史と文化的背景

内山紙は、長野県飯山市内山地区で江戸時代から作られている伝統的な和紙です。その起源は、およそ350年前にさかのぼるとされ、厳しい寒さの中で育まれた独特の製法が今も受け継がれています。当時、この地域では冬の農閑期に副業として紙すきが盛んに行われており、地域全体が紙づくりに関わる暮らしをしていました。

昭和30年代に入り、工業製品の普及やライフスタイルの変化により一時衰退しましたが、地域の人々や職人の努力によりその技術は守られ、1982年には「内山紙技術保存会」が結成されました。さらに、1993年には「内山紙技術」が国の重要無形文化財に指定されるなど、日本を代表する伝統技術として高く評価されています。

たとえば、自然素材を用いた紙づくりや、手仕事による丁寧な工程は、現代人が忘れがちな「ものづくりの原点」を感じさせるものであり、文化財としての価値だけでなく、心を豊かにしてくれる魅力があるのです。

他の和紙との違いとは?特徴を比較

和紙には全国各地にさまざまな種類がありますが、内山紙はその中でも「強さ」と「美しさ」を両立していることで知られています。たとえば、内山紙の最大の特徴は、「越後和紙の流れをくむ独自の製法」と「寒冷地ならではの製紙環境」にあります。

他の有名な和紙、たとえば岐阜県の美濃和紙や島根県の石州和紙と比べても、内山紙は繊維が長くて丈夫で、長期間使用しても破れにくい特性を持っています。また、紙の表面に微細な光沢があり、半透明でしなやか。これは、厳しい寒さの中で時間をかけて乾燥させることで生まれる独特の風合いです。

つまり、内山紙は単なる「書く紙」ではなく、「魅せる紙」としての価値も高く、和の美意識が詰まった素材だと言えるでしょう。

内山紙が使われる代表的な用途

内山紙は、その高い耐久性と美しさから、さまざまな用途で活用されています。伝統的には、障子紙や襖(ふすま)紙としての利用が多く、和の空間に欠かせない素材として重宝されてきました。特に、長期間貼り替えが不要で、光をやわらかく通すため、心地よい空間づくりに最適です。

さらに近年では、アート作品の素材としても注目されており、書道家や日本画家が愛用するほか、**修復用紙(文化財の補修)**としても活用されています。たとえば、古文書や巻物、掛軸などの保存修復に使われるのは、丈夫で自然な風合いを持つ内山紙ならではの品質が求められるからです。

また、和紙小物やランプシェードなどのインテリア雑貨としての展開も進んでおり、「使う和紙」から「暮らしを彩る和紙」へと、その役割が広がっています。これは、内山紙のポテンシャルの高さと、多用途性を示す好例です。

内山紙の作り方を工程別に解説

原材料の準備:楮(こうぞ)の選定と処理

内山紙の作り方は、自然素材である「楮(こうぞ)」から始まります。楮は和紙の原料として最もポピュラーで、繊維が長く強度に優れているのが特徴です。特に内山紙で使用される楮は、地元飯山市で栽培されたものや、厳選された国内産が中心で、その品質管理には非常に気を遣っています。

楮の収穫は冬に行われ、伐採された木の皮を剥ぎ、「黒皮」と呼ばれる状態で保管されます。その後、「煮熟(しゃじゅく)」という工程でアルカリ液(主にソーダ灰)を使って煮込み、繊維を柔らかくします。煮た後は水洗いし、異物や汚れを取り除く「チリ取り」の作業を行い、純粋な繊維だけを残します。

たとえば、丁寧にチリ取りを行うことで、紙に黒い点やゴミが混じらず、見た目も手触りも滑らかな和紙に仕上がります。この工程こそが、内山紙の「清らかさ」と「美しさ」の基礎をつくっているのです。

紙すきの工程:伝統技術の流れを紹介

原材料の処理が終わったら、次は紙すきの工程です。ここでは「流しすき」と呼ばれる伝統的な技法が用いられます。これは、竹の枠に網を張った「すき舟」に紙料(楮の繊維と水)を流し込み、均等な厚みになるよう揺らしながら何度もすくっていく手法です。

このとき、植物由来の粘剤「トロロアオイ(ねり)」が加えられます。ねりは水中で繊維を均等に分散させる役割を持ち、すきムラを防ぎ、美しい仕上がりにするためには欠かせない存在です。紙すき職人は、このねりの状態や繊維の流れを見極めながら、微妙な力加減とリズムで紙をすいていきます。

たとえば、熟練の職人が手がけると、同じ厚み・同じ質感の紙が何枚でも作れるほど。その精度の高さと、機械には真似できない繊細さが、内山紙の魅力を支えています。

乾燥と仕上げ:美しい内山紙ができるまで

すき上げた紙は、重ねたまま水を切り、「紙干し(かみぼし)」という乾燥の工程へ移ります。内山紙では、**「天日干し」**という方法が用いられ、乾燥棚に一枚一枚丁寧に貼り付け、太陽の光と風を利用して自然乾燥させます。これにより、紙の繊維がまっすぐ整い、独特の光沢と強さが生まれるのです。

天日干しは、天候に左右されるため一日に作れる枚数が限られますが、それでも職人たちは天候を読み、ベストなタイミングで作業を進めています。また、乾燥後の紙は一枚ずつ検品され、歪みや汚れがあれば除外されるなど、品質管理も徹底されています。

つまり、最後の仕上げまで手を抜かないその姿勢こそが、内山紙のクオリティの高さを物語っています。機械では決して真似できない、自然と人との協働によって生まれる一枚一枚が、まさに「芸術」とも言える存在です。

内山紙作りを体験できる場所やイベント情報

長野県・飯山市の工房を訪ねて

内山紙の本場である長野県飯山市には、実際に紙すき体験ができる工房がいくつか存在します。その中でも有名なのが「内山和紙体験の家」や「内山紙工房」で、ここでは職人の指導を受けながら、実際に自分の手で和紙をすくことができます。

これらの工房では、伝統的な道具や素材を使って、1枚の内山紙を作り上げることができるため、大人から子どもまで幅広い世代に人気です。たとえば、観光で訪れた際に1〜2時間程度で気軽に参加できる体験プログラムもあり、旅の思い出づくりにもぴったりです。

また、職人との会話を通して、和紙作りに込められた想いや技術の奥深さを知ることができるのも、こうした現地工房ならではの魅力です。工房周辺には、自然豊かな風景や温泉地も点在しており、観光と組み合わせて訪れるのもおすすめです。

ワークショップで体験できる内容とは?

内山紙体験のワークショップでは、紙すきだけでなく、紙の原料作りから乾燥までの一連の工程を学べるプログラムもあります。とくに人気が高いのは、「自分だけのオリジナル和紙はがき」や「しおり作り」の体験で、作った作品はそのまま持ち帰ることができます。

たとえば、季節の草花を紙にすき込んで模様を作るコースや、染料を使って色をつけるカラフルな和紙作りなど、創作の自由度が高いのも特徴です。子ども向けの簡単な体験から、職人気分を味わえる本格的なコースまで、目的に合わせて選べるのも嬉しいポイントです。

また、体験後には和紙製品のお土産が買えるショップも併設されていることが多く、実際に内山紙を使用した商品に触れながら、その魅力を再確認することもできます。

観光とセットで楽しむ内山紙体験

内山紙作り体験は、単なる「手作り体験」にとどまらず、長野県飯山市の地域文化や自然をまるごと味わえる観光コンテンツとしても人気です。たとえば、紙すき体験の前後には、近隣の温泉地「戸狩温泉」や、「北信濃の絶景」を楽しめるスポットを訪れる観光プランも人気です。

また、冬の時期にはスキー旅行とセットで楽しむ家族連れも多く、観光と文化体験の両方が叶う旅として高い満足度を得ています。さらに、地元の農産物を使った郷土料理や、古民家カフェなど、周辺施設との連携イベントも定期的に開催されており、地域全体で「和紙文化」を盛り上げています。

つまり、内山紙の体験は「見る・作る・学ぶ・食べる・癒される」といった五感すべてで楽しめる総合体験なのです。旅行の一部として、ぜひ内山紙の世界に触れてみてはいかがでしょうか?

まとめ【H2】

内山紙は、長野県飯山市で受け継がれてきた、日本を代表する伝統和紙のひとつです。自然素材と手仕事によって生み出されるその美しさと強さは、他の紙にはない独自の魅力を持ち、文化財の修復から日用品まで幅広く活用されています。本記事では、その歴史や特徴、作り方の工程をわかりやすく紹介し、さらに実際に体験できるスポットもご案内しました。和紙文化をより身近に感じるきっかけとして、ぜひ一度、内山紙の世界に触れてみてください。

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