漆器

香川漆器の伝統技法「後藤塗」とは?特徴や魅力、歴史を徹底解説

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香川県の伝統工芸である「香川漆器」は、洗練された技法と美しい仕上がりで知られています。その中でも「後藤塗(ごとうぬり)」は、独自の塗り技術によって生み出される深みのある色合いと艶が魅力の漆器です。

江戸時代に誕生し、長い歴史の中で職人たちによって受け継がれてきた後藤塗は、他の漆器とは異なる特徴を持ち、多くの人々に愛され続けています。本記事では、後藤塗の歴史や技法、魅力について詳しく解説し、現代における活用方法や未来への展望についてもご紹介します。

香川漆器と後藤塗の基本情報

香川漆器とは?歴史と特徴

香川漆器は、香川県高松市周辺で発展した伝統的な漆器です。その歴史は江戸時代初期にさかのぼり、高松藩の奨励によって漆工技術が発展しました。香川漆器には「後藤塗」「存清(ぞんせい)」「象谷塗(ぞうこくぬり)」「蒟醤(きんま)」などの技法があり、それぞれに異なる特徴があります。

香川漆器の魅力は、色鮮やかで立体感のある仕上がりと、使い込むほどに味わいが増す点です。特に、後藤塗は漆を重ねて塗り込み、艶やかな表面に仕上げるのが特徴です。

後藤塗の由来と歴史

後藤塗の始まりは江戸時代中期とされ、後藤家の職人によって確立されました。後藤塗は、木地に何層にも漆を塗り重ねることで、透明感のある奥深い色合いを生み出す技法です。

後藤家は代々この技術を継承し、高松藩の庇護のもとで発展しました。その後、庶民にも広がり、香川漆器の代表的な技法の一つとして確立されました。

後藤塗の特徴と他の技法との違い

後藤塗の最大の特徴は、分厚く塗り重ねられた漆の層が生み出す透明感と深みです。他の香川漆器の技法と比較すると、存清は色漆を使って華やかな装飾を施し、象谷塗は細かい彫り込みを活かした技法であるのに対し、後藤塗はシンプルながらも高級感のある仕上がりが特徴です。

また、後藤塗は手触りの滑らかさや、光を当てると浮かび上がる奥深い艶が魅力であり、使うほどに風合いが増していく点も大きな魅力です。

後藤塗の技法と製作工程

後藤塗の技法の特徴

後藤塗の技法は、漆を何層にも塗り重ねる「塗り込み」の手法が特徴です。通常、漆器の多くは下塗り・中塗り・上塗りの工程を経ますが、後藤塗はそれを繰り返し行うことで、非常に滑らかな質感と深みのある色を生み出します。

また、後藤塗の色合いは黒や朱が中心で、シンプルながらも高級感があり、日常使いから特別な席まで幅広く使われます。

後藤塗の製作工程を解説

  1. 木地作り:漆器の土台となる木地を作る工程で、木材を削り出して形を整えます。
  2. 下地塗り:漆を塗り、表面をなめらかに整えます。
  3. 塗り込み:何度も漆を塗り重ねることで、透明感と奥行きのある色を出します。
  4. 仕上げ研ぎ:表面を磨き上げ、艶を出します。

H3:後藤塗に使われる道具と材料

後藤塗の製作には、天然の漆と専用の刷毛が使われます。また、塗りの工程では「砥の粉(とのこ)」や「地の粉」などの下地材を用い、木地を滑らかに仕上げます。

後藤塗の魅力と活用シーン

後藤塗の美しさと芸術的価値

後藤塗の美しさは、何層にも重ねられた漆による深みのある光沢と、透明感のある色合いにあります。この独特の仕上がりは、見る角度や光の当たり方によってさまざまな表情を見せ、使い込むほどにさらに味わいが増していきます。漆の塗り重ねや研ぎ出しの技術は、熟練した職人の手仕事によって生み出されるものであり、一点一点に込められた技術と時間が、芸術作品としての価値を高めています。たとえば、茶道具や装飾品としても重宝され、鑑賞用として飾られることもあります。

また、後藤塗は単に美しいだけでなく、その耐久性にも優れています。漆は自然由来の塗料でありながら、乾燥すると非常に強固な膜を形成し、傷や水分にも強い性質を持ちます。このため、長年にわたって美しさを保ちつつ使用することができる点も魅力の一つです。伝統的な技法により、手に馴染む滑らかな手触りが生まれ、使うたびに心地よい感触を楽しめるのも特徴です。

現代の暮らしに取り入れる後藤塗

後藤塗の漆器は、伝統的な和の文化を感じさせる一方で、現代のライフスタイルにも違和感なく溶け込むデザインが魅力です。たとえば、日常の食卓で使用するお椀やお皿として取り入れることで、食事の時間をより上質なものにしてくれます。和食との相性はもちろん、シンプルで洗練されたデザインのものは、洋食ともよくマッチし、スープ皿やサラダボウルとしても活用できます。

さらに、後藤塗はインテリアとしても優れた存在感を発揮します。たとえば、花器や小物入れとして使うことで、部屋に温かみと高級感をプラスできます。木のぬくもりと漆の光沢が調和したデザインは、和室だけでなくモダンな洋室にもなじみ、落ち着いた雰囲気を演出します。結婚祝いや新築祝いの贈り物としても人気があり、特別な贈り物として喜ばれることが多いのも特徴です。

後藤塗の名品と購入できる場所

後藤塗の魅力を実際に手に取って感じたい場合、香川県内の漆器専門店や工房を訪れるのがおすすめです。地元の職人が手がけた作品を直接見ることができ、実際に質感や色合いを確かめながら購入できます。特に、伝統的な技法を受け継ぐ工房では、職人の技を間近で見ることができる体験型のイベントを開催していることもあり、より深く後藤塗の世界を知ることができます。

また、近年ではオンラインショップでも後藤塗の漆器を購入することが可能になっており、全国どこからでも手に入れやすくなっています。代表的な後藤塗の作品として、お椀や茶托、箸などの食器類のほか、アクセサリーやインテリア雑貨なども販売されており、用途に応じて選ぶことができます。特に、手作業で仕上げられた一点物の作品は、他にはない特別な魅力があり、自分だけのこだわりの逸品を見つける楽しみもあります。

後藤塗の未来と職人たちの挑戦

後藤塗を継承する職人たちの努力

後藤塗は長い歴史を持つ伝統工芸であり、その技術を未来へと受け継ぐために、多くの職人が日々努力を重ねています。特に、後継者不足が深刻な課題となっている中で、熟練の職人たちは若手の育成に力を注いでおり、技術の伝承を目的とした研修制度や、弟子入りの機会を増やす取り組みが進められています。例えば、地域の工房ではワークショップを開催し、実際に漆を塗る体験ができる場を提供することで、若い世代や一般の人々に後藤塗の魅力を伝えています。

また、伝統技術を守るためには、単に技術を伝えるだけでなく、現代のライフスタイルに適応させることも重要です。そのため、多くの職人が新しいデザインや用途を模索し、伝統的な技法を活かしながらも、時代に合った後藤塗のあり方を追求しています。たとえば、木製の漆器だけでなく、金属やガラスと組み合わせた新しい作品を生み出すことで、より多くの人々に手に取ってもらえるような工夫がなされています。

後藤塗×現代デザインのコラボレーション

近年、後藤塗は伝統的な工芸品という枠を超え、現代デザインとの融合を図る動きが活発になっています。若手デザイナーやアーティストとのコラボレーションによって、これまでにない斬新なデザインの漆器が生まれ、若年層や海外の消費者にも注目されるようになりました。例えば、シンプルで洗練されたフォルムの食器や、カラフルな色合いを取り入れた現代的なデザインの漆器が登場し、これまで漆器に馴染みのなかった層にも受け入れられています。

さらに、海外市場への展開も積極的に進められています。日本の伝統工芸品としての価値を伝えるため、国際的な展示会やデザインフェアに出展する機会が増えており、フランスやアメリカ、アジア諸国でも後藤塗の美しさが評価され始めています。特に、海外では「サステナブル」な製品への関心が高まっているため、天然素材を使用し、長く使える漆器はエコフレンドリーなアイテムとしても注目されています。このように、伝統と現代の融合によって、後藤塗は新たな市場を開拓しつつあります。

後藤塗を未来につなぐためにできること

後藤塗の技術と文化を未来へとつなぐためには、職人の努力だけではなく、私たち消費者の意識と行動も重要になります。まず、後藤塗の魅力を深く知ることが大切です。実際に漆器を手に取って使ってみることで、その美しさや手触り、使い心地を体験し、伝統工芸品の価値を実感することができます。また、後藤塗について学ぶ機会を持ち、工房見学や展示会に足を運ぶことで、職人の技や制作過程への理解を深めることができます。

さらに、後藤塗を支えるためには、購入を通じて応援することも効果的です。職人の手によって一つ一つ丁寧に作られた漆器を日常生活に取り入れることで、伝統技術の継承を後押しすることができます。また、SNSや口コミを活用し、後藤塗の魅力を発信することも支援の一環となります。たとえば、後藤塗の器を使った料理写真を投稿したり、職人のストーリーを紹介することで、より多くの人にその価値を伝えることができます。こうした小さなアクションの積み重ねが、後藤塗の未来を支える大きな力となるのです。

まとめ

後藤塗は、香川漆器の中でも特に美しい技法の一つであり、漆を何層にも重ねることで生まれる奥深い色合いと艶が特徴です。その歴史は江戸時代に遡り、職人の手によって受け継がれてきました。

現代では、日常生活に取り入れやすいデザインの漆器も増えており、食器やインテリアとしての活用も注目されています。後藤塗の未来を支えるためには、その価値を知り、積極的に取り入れていくことが重要です。

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